なぜ今、あえて裸足なのか?

  

私、高岡尚司のフルマラソンの自己ベストは

裸足で走った、2時間45分39秒です。

 

しかし、中学3年の後半から大学までは

いわゆる陸上中長距離のメインストリームの中にいましたし

もちろん、シューズも履いていました。 

 

帝京大学時代

 

その僕がシューズを脱いで走り始めたのは、2010年の9月。

 

それにはもちろん、大きな理由がありました。

 

 

中学の時は、記念すべき第一回全国中学高駅伝大会の

1区を区間3位で走り、福岡の名門・大牟田高校に進学。

 

しかし、ほとんど故障ばかりでした。

 

しかも、体だけではなく、心も。

 

痛みで走れないということもありましたけど

それより何より、走ることが嫌で嫌でしようがない。

 

僕がいた高校では、走れない人間は

ほとんど存在価値がありませんでした。

 

そんな、劣等感しかなかった高校3年間で

人生初めての挫折を味わい

しかも大学浪人するオマケもついて

箱根駅伝を走るために、帝京大学に入学。

 

関東インカレの1500mでは

1年時、3年時、4年時の3回入賞したものの

最終学年でメンバー入りできそうだった箱根駅伝では

直前の練習でふくらはぎの肉離れを起こし

結局、箱根路を走ることはかないませんでした。

 

 

山あり谷ありのランニング人生で

今思い起こしても、この「谷」の部分の経験は

すごく辛い思い出では、あります。

 

ただ、この負の体験は僕に大きなきっかけをくれました。

 

この負の経験は

僕に治療家としての道を与えてくれたんです。

 

 

さて、選手としての立場ではなく、鍼灸マッサージ師として

箱根駅伝を目指す学生と向き合うようになってからも

様々な「谷」が試練を与えてくれました。

 

その中でも特に忘れられないのは

エースだった学生が、直前の故障で

箱根駅伝に出場できなかったことです。

 

僕がそうだったように

彼にとっても箱根駅伝は最大の目標。

 

しかもエースである彼は

チームの中でも大きな役割を担っていましたし

調子も上向きで、本番を心待ちにしていました。

 

そんな中、最終合宿中の練習で故障してしまったのです。

 

12月10日のチームエントリー日

(補欠を含めた20人のメンバーを登録する日)の

前日だったと記憶しています。

 

その時はまだ、本番まで3週間残っていたので

回復するだろうと見込んでいましたが

なかなか治らない・・・。

 

ジョギンだけでもできれば

体力の低下を最低限に抑えられますが

それすらもできない毎日が続き

12月29日の区間エントリーを迎えました。

 

 

とうとう、彼は間に合いませんでした。

 

 

この日、選手のケアが終わり帰り支度をしていると

彼は治療室に申し訳なさそうに入ってきて

「悔しです」と、何度も繰り返しながら泣いていました。

 

僕も、この学生のために何もしてあげられなかった不甲斐なさと

過去の自分の悔しさが重なり

一緒に泣いていました。

 

 

 

辛い思い出ですが、この出来事は僕に

大きなきっかけを与えてくれました。

 

ランニングによる故障は

ベッド上の治療だけではダメだと考えるようになったのです。

 

彼だけではなく、故障が治っても

またすぐ故障して治療に戻ってくるような学生もいたので

「これはもう、根本的に走り方を見直さなければならない」

「走り方が変わるような『何か』に取り組まなければならない」

そんなことをずっと考えながら

現場で彼らと向き合うようになりました。

 

 

 

そんなある日、知り合いから

「Born To Run 走るために生まれた

ウルトラランナーVS人類最強の走る民族」(NHK出版)

という本を教えてもらい、すぐに読み始めました。

 

そして、シューズはケガを減らしてくれるどころか

増やしているという、ナイキのエピソードのあたりで

もういてもたってもいられず

すぐに裸足で走り始めたのです。

 

これだ!と思いました。

 

故障を繰り返すランナーに必要なのは

裸足で走ることだ!と。

 

 

実は、僕が通っていた熊本の小学校は

校舎の中も校庭も、裸足で生活することができたんです。

 

校舎の中で上履きを履く子はゼロ。

校庭も裸足で走りまくっていて

下駄箱横の足洗い場でバシャバシャと足を洗い

入口に備えつけてある足拭きマットで

ザッと足を拭いて教室に入る。

 

そんな環境でした。

 

もちろん、運動会なんて、ずっと裸足。

女の子の中にはシューズを履いている生徒もいましたが

リレーの選手はみんな裸足。

 

なぜなら、シューズを履くと遅くなるから。

リレーで選手になるような生徒たちは

みんなそう信じていました。 

 

 

青のハチマキが高岡です

 

そんな環境で育ったからか

裸足で走ることに特別な抵抗感はありませんでした。

 

むしろ、シューズに守られていたのでは

自分の弱点が見えなくなるし

人間本来の走りなんて分かるはずがない

という思いの方が強かったです。

 

それからは、裸足で走ることに没頭しました。

 

最初はジョギングで少しずつ慣らして。

 

今でこそそんなことはなくなりましたが

陸上競技場のトラックをゆっくりジョギングするだけでも

最初は足の裏の皮がむけたりしていましたから

相当雑な走りだったんでしょう。

 

それから少しずつ、シューズを履いていたときと同じように

400mや1000mのインターバルを始めました。

 

タイムも、400mだったら70秒とか

1000mだったら3分だったり。

 

もっと筋肉痛が出るものだと思ってたので

意外に足へのダメージが小さかったのにはびっくりしました。

 

ただ、競技場でのインターバルは

問題なくできるようになってきましたが

ロードになると、路面の凹凸に気を取られながら

少し窮屈に走っていました。

 

そして・・・

僕は大きな課題に直面しました。

 

職場の近くの道路をジョギング中のこと。

その時はペースを上げるということもなく、ゆっくり走っていたのに

なぜか左のふくらはぎがすごく張ってきたのです。

 

「おかしいなぁ・・・」と思いつつ

そのまま走っていたら

急に左ふくらはぎにピリッとした痛みが走りました。

 

懐かしくも忌々しい、あの、箱根駅伝の直前に起きた

肉離れと同じ症状でした。

 

その日はもう無理をせず、歩きながらトレーニングを終えました。

 

そして次の日、ストレッチをしても痛くなかったので

「何だ、昨日のは気のせいだったのかな?」と

また走り出したら、今度は前日よりも強い痛みが・・・。

 

無理をしてはダメだなと思い、1週間ほど休みました。

 

すると症状はだいぶ改善したので

またゆっくりしたペースのジョギングから始めました。

 

もちろん、裸足で。

 

すると今度は、反対の右ふくらはぎに同じ症状が出たのです。

 

正直、信じられませんでした。

 

仕方がないので、また1週間ほど休んで

ストレッチをしても痛みが出なくなってから走り始めました。

 

すると、なんと、今度はまた左のふくらはぎに痛みが・・・

 

もう、何が何だかわからなくなりました。

何でなんだ・・・???

 

「本当は、裸足って良くないのかな?」

そう思ったことは一度や二度ではありません。

 

以降半年間

ふくらはぎの肉離れを左右3往復も繰り返してしまいました。

 

 

 

しかし、このことがあって僕は気づくことができました。

 

裸足で走ることが

そのまま自動的にランナーの故障を改善するのではなく

(もしかしたらそういう場合もあるかもしれませんが)

裸足で走るメリットのひとつは

人間としてあるべき体の使い方ができてるのかどうかを

身を以て知ることができるということ

 

僕はこのサインを元に

できるだけふくらはぎから目を離し、考えないようにしました。

 

それでもやっぱり

痛みが出る度に心は折れそうになります。

 

でもその度に

ふくらはぎの肉離れは

ふくらはぎに問題があるから起きているのではないはず!

 

この症状の根源は

ふくらはぎではない他のどこかにあるはずだ

 

そう信じてシューズを履かずにトライを重ねました。

 

 

そして、僕の仮説は的中しました。

 

ふくらはぎの肉離れループに

3往復目で終止符を打つことができたのです!

 

最初は恐る恐るでしたが

3日走っても、2週間走っても痛みが出てこない。

 

僕に足りなかったのは、これだったんだ!

 

飛び跳ねて喜びました。

 

 

それと同時に、僕がこのケガで気づいたある動きは

ふくらはぎだけではなく

ランニング傷害全般の解決策としても必須であると仮定し

治療の現場で応用すると、患部を触ることなく

痛みが改善する症例がほとんどであることがわかりました。

 

 

この、ふくらはぎの肉離れから気づいたことは

胴体を使って走ること

 

胴体の動きと四肢の動きの関係をリノベーションすることなんです。

 

これができていなかったから

何度も何度も肉離れを繰り返すことになったのでしょう。

 

 

また、このリノベーションがうまくいってからは

ケガを改善するだけではなく

パフォーマンスアップという面でも大きな成果を

上げることができました。

 

 

2010年9月から裸足で走り始め

紆余曲折ありながらも「胴体を使って走る」ということに気づき

トレーニングを積み重ねて出た2012年の東京マラソンは

2時間50分21秒。

 

初めてのサブスリーは「ビブラム・ファイブフィンガーズ」という

五本指のシューズを履いてレースに出場しましたが

後半のペースダウンはほとんどなく

歓喜のゴールを迎えることができました。

 

そして、迎えた2012年の湘南国際マラソンにて

裸足で2時間45分39秒でゴールできたわけです。

 

ちなみに、シューズを履いて走ったマラソンのベストタイムは

3時間7分ですから、シューズを履いたベスト記録よりも

裸足で走った方がタイムが速い・・・。

  

2008年

2009年


 

2012年

 

歓喜のゴール!

 


 

 

シューズに頼っていた頃には

考えられなかったタイムを出すことができたのは

ふくらはぎの肉離れ3往復という「大失敗」から学んだ

胴体と四肢の適切な関係性を身につけたから。

 

それによって

ランニングにおけるケガの改善とパフォーマンスアップは

同一線上にあることを確信しました。

 

 

僕たち人間は、二足で立ち、歩き、走ることができます。

これは僕たちにとって「自然」なことです。

 

それと同じように、僕たちの体の機能にも「自然」があります。

 

例えば、足には

シューズを履かずとも衝撃吸収する機能が

そもそも備わっていることも「自然」です。

 

そして、胴体を使うことも

人間のランニングにおける「自然」です。

 

その、僕たちにそもそも備わっている「自然」と

僕たちが住むこの地球の重力という「自然」を調和させる。

 

これが「人間が走る」ということの必須事項。

 

 

裸足で走るということは、僕やあなたのランニングが

地球と調和できているかどうかをチェックするために

これ以上ない方法です。

 

 

しかし・・・

 

裸足で走ったり、裸足感覚のシューズで走るということが

先に挙げた「Born To Run」の爆発的ヒットで

一気に日本に広がりましたが

残念ながら、ただ単に「裸足は良いんだよ」という

浅はかな認識だけが広がっただけで

その真意が浸透したわけではありませんでした。

 

 

なぜなら、多くの人が裸足や裸足感覚シューズを履いて走ることで

人間の「自然」を取り戻そうとしましたが

現代を生きる僕たちの体と動きは

もう「自然」な状態には程遠く

多くの人が「自然」の厳しさに叩きのめされ

そして結局「自然」は体には良くない、難しい

私には向かないと「自然」を否定し始めました。

 

 

しかし、僕たちの体に「自然」は必ず残っています。

 

40歳になると足の骨が半分に減るということはないでしょう?

50歳になると背骨の数が減るということもありません。

 

ただ単に

あるべき姿を放ったらかしにしていたせいで

使い方がわからなくなっているだけなのです。

 

 

 

だから

裸足で走る

裸足でも走れる

あなたの体を一度、ゼロベースな姿勢で

見つめ直していただきたいんです。

 

 

 

なぜ今、あえて裸足なのか?

 

便利なモノやコトが増えている今の時代だからこそ

裸足で走る価値があるんじゃないでしょうか?